そしてボクは口をつぐむ

 上手いことの一つも言えない。いや、上手いことどころか何も言えない。言うのが怖い。

 世の中には口を開くと場を冷めさせててしまうという人が確実にいます。お前がしゃべると白けるんだよ、頼むから黙っててくれ、と内心思ったことが幾度もあります。しかし二十年以上生きていれば、自分自身もその「冷めさせてしまう方の人間」だと、分かってしまいます。気付いてしまうともう駄目です。しゃべれません。

 他の「冷めさせちゃう人」を観察して思うのは、言葉の内容より、声とかしゃべり方が問題なんだろうなと思います。言ってること自体は、よく聞いてみるとまあそこそこ普通だったりする。それなのにやたら浮いて、場が一気に引いてしまう。演説するには良い声しれないけど、雑談で周囲を静まらせてどうすんだよ。助さん格さんにでもなるのかよ。

 そこで自分を振り返るに、声は甲高くて変です。しゃべり方……よく分からない。でもどっちも、どうすれば聞き心地良くなるのか分かりません。

 どうすりゃいいのか分からなくてしゃべらない→余計口べたに→たまに口を開くとさらにどん引きされる→余計しゃべれなくなる→の悪循環になってるのは分かってます。でも、もう嫌なんですよ。口を開くたびに変な空気が流れるんじゃないかと緊張しておびえて、勇気を振り絞ってしゃべってみては懸念通り嫌な空気になってその場にいたくなくなるのは。どうせその場にいたくなくなるなら、もう最初からその場にいないかのように、せめて他の人たちが楽しくお話しできるように笑い役に徹していたい。

 そんな風に心から思えたら良いんですけどね。でも本当は面白いこと言って笑わせたい。だから鬱々として、余計人として醜くなって、面白さとはかけ離れていくのでしょう。