落とし物を拾うこと

 今日、道を歩いていたら、自転車に乗っていた女の人がバランスを崩して荷物を落とす場面に出くわしました。リンゴが道を転がっていったので、拾い集めて女の人に渡しました。ありがとうございます、と言われたのに対して、「あ、いえ……」ともごもごと返して、別れました。

 なんかなー。いい人ぶって気持ち悪いわ、自分。りんごを数個拾うくらい、その女の人が自分ひとりでやったって大した手間でもないだろうに。むしろ、通りすがりの人に拾われて近くにきて待たれたら、急いで荷物を積みなおして受け取らなきゃ、みたいになって迷惑だとすら言えるかもしれない。

 ……っていうかまあ、何が嫌って、この程度の親切すら、さりげなく自然な心持ちでできず、「良いことするぞ!」なんて意識して、あまつさえお礼を言ってもらうことなんかも考えに入れたうえで、じゃないと実行できない自分の卑小さ、薄汚さ、偽善っぷり、が嫌なんですけど。

 リンゴを触った手のキシキシした感じが、しばらく気持ち悪く違和感として残りました。

 でもなー。多分これ、リンゴを拾わなかったら拾わなかったで、その程度の親切すら実行できない自分の勇気のなさに自己嫌悪に陥るんだろうなあ。もうなんなのこいつ、面倒くさくて仕方ないわ。